公示地価が発表になり、不動産市況は上昇に転じていると発表になっていますが、この発表の前に、東京カンテイが3月16日に発表しましたところ、以下のようになっていました。
≪中古マンション価格は首都圏で下落傾向≫
2月の首都圏の中古マンション価格(70u)は一月に比べ4.2%下落し、2,433万円となり、2ヶ月連続して下落し、同社の判断では、<明らかに中古マンションは下落傾向>としています。
詳細:東京都 −2.5% 千葉 −2.1%
東京都内のマンション価格の下落が大きくなっているのです。
しかしながら、マスコミで報道されるのは<地価上昇><早く買わないと>という煽る記事ばかりです。
今回のレポートのような内容は一切報じられません。
地価上昇が日本一となりました<名古屋・中部圏>はさぞ上昇しているだろうと思いきや、<−1.8%>となり、こちらも下落しています。
個人が不動産投資をしたり、自宅用にマンションを買ったりしている例が多いですが、そのような方は地価上昇ではなく、価格下落に見舞われており中には膨大な含み損を抱えている方が殆どなのです。
ところがマンション販売現場では、今回の地価上昇発表で、中古マンション販売価格を引き上げたところがあります。一斉に強気に転じてきているのです。結果は?
誰もついてきていません。今はまだ金融機関が不動産会社向けにジャブジャブに資金を提供していますから、マンション買取業者は強気に出て、<マンション販売在庫>を抱えて価格を引き上げていますが、それも売れないと分かれば投げざるを得ないはずです。
それとも、欲に目がくらんだ個人が業者の思惑通りの価格で買取り、後から『失敗した・・・』となるのでしょうか?
さて、公示地価ですが、既報の通り、まともな価格ではありません。
<公示地価の判定方法>
公示対象は毎年1月1日における標準地の単位面積あたりの<正常な価格>。売り手にも買い手にも偏らず、<客観的な価値>を表した。
<正常な価格>の判定は標準地に建物がある場合には、建物がないもの、つまり更地として行われる。各標準地について2人の不動産鑑定士による評価結果を<審査>し、必要な<調整>を行って判定する。2006年の公示地価では、2,711人の不動産鑑定士が鑑定評価を行った。
これが公示地価なのです。
<審査>し<調整>された数字は一体どのような数字でしょうか?
統計や売買・評価の基準となる地価になぜ<審査>や<調整>が必要なのでしょうか?
審査し調整する者が、『今年は地価を上げよう』という意図があれば、必要な調整をして価格を引き上げることが出来るのです。
大多数の国民に知らされる<東京都・名古屋市・大阪市>の土地の価格を引き上げようと思えば、幾らでも<調整>し、引き上げることが出来るのです。
<住宅地>
東京都内 +0.8% (東京圏 −0.9%)
大阪市内 −0.5% (大阪圏 −1.6%)
名古屋市 +1.4% (名古屋圏 −1.3%)
この数字からは、東京都内と名古屋市は僅かながら上昇していますが、市内のような極めて限られた地点であればいくらでも数字は調整できますが、さすがに大きな<圏>となりますとそうはいきません。
東京圏・大阪圏・名古屋圏ともそろって<下落>しているのはこのためです。
上記の中で詳しく見てみますと、全国の住宅地の地価上昇率ベスト10は全て東京都港区となっていましたが、港区は<ファンド・金融機関>が集中的に資金を投入しており、最大上昇率は<28.8%>となっていますが、その実態はどうなっているのでしょうか?
<住宅地> *一平方メートルあたり
1位 東京都港区南青山5−5−11 上昇率28.8% 134万円
『さすが青山だね。値上がり一位か。さぞかし立派な屋敷があるんだろう』、と普通は思いますが、因みにここには<ハウス南青山>というマンションが建っているのです。
ここを鑑定した鑑定士や調整した担当者は、このマンションをつぶして平地にしたとして、全国値上がり率一位に設定したのです。
商業地地価ベスト10には、名古屋市が8つも登場し、最大値上がり率は<38%>となっていました。
<商業地> *一平方メートルあたり
1位 名古屋市中村区名駅1−2−2 上昇率38.0% 483万円
因みにここは近鉄パッセというビルがあるところで売り物ではありませんし、つぶすのにも億円単位の費用が掛かりそうです・・・。
ここが値上がり一位と指摘されましても、誰が妥当といえるのでしょうか?
では、なぜこのような値上がり発表となったのでしょうか?
東京は<ファンド・金融機関>の為、名古屋は<トヨタ>の為に調整したとすれば、彼らは物凄い恩恵を受けたことになります・・・。
反対に<ファンド・金融機関>が恩恵を受けない地点は?
以下はいずれも下落ベスト10です。
<住宅地>
1位 |
北海度江別市 |
−16.7% |
|
6位 |
長崎市 |
−15.8% |
2位 |
北海道小樽市 |
−16.4% |
|
7位 |
北海道小樽市 |
−15.5% |
3位 |
北海道小樽市 |
−16.3% |
|
8位 |
北海道小樽市 |
−15.3% |
4位 |
北海道江別市 |
−16.3% |
|
9位 |
大阪府泉南郡 |
−15.2% |
5位 |
北海道江別市 |
−15.9% |
|
10位 |
大阪府阪南市 |
−15.1% |
<商業地>
1位 |
北海道旭川市 |
−28.9% |
|
6位 |
高知県四万十川市 |
−18.5% |
2位 |
北海道苫小牧市 |
−25.2% |
|
7位 |
長崎県大村市 |
−18.0% |
3位 |
北海道苫小牧市 |
−19.3% |
|
8位 |
秋田県秋田市 |
−17.6% |
4位 |
北海道釧路市 |
−19.2% |
|
9位 |
秋田県秋田市 |
−17.4% |
5位 |
山口県周南市 |
−19.2% |
|
10位 |
青森県青森市 |
−17.3% |
商業地・住宅地とも<北海道>の惨状が伺えますが、この中に大阪府や秋田・青森・山口・高知等といった投資に凡そ縁がない地域も含まれています。
資金が入ってこない都市は、値段さえつかない土地になりつつあるのです。
売れればまだましという状況になりつつあるのです。そのような状況で、果たして地方経済が復活するでしょうか?
そして、今、世界的な金利引き上げ時代に入り、上記の<不動産ファンド・金融機関>が作ったバブルが崩壊する寸前にまで来ています。
3月20日付け日経ビジネスでは、このように報じられていました。
『まさにこれから未体験ゾーンに突入するわけです。前回のバブル期などこれまで、先に金利が上がって、後で賃料が上がった。しかしこの5年間は違う。賃料は上がったが金利は上がらなかった。不動産業界は、極めて恵まれた環境にあったわけです。金利という概念を今一度見詰め直す必要がある。痛い目を見る不動産ファンドなどが出てくることになるでしょう』
これを述べたのは、不動産業では重鎮といわれる森(ビル)トラストの森章社長です。そしてこのようにも述べています。
『(金融引き締めという)引き潮が進んでいくに従って、それまで覆い隠されていた問題点が顔を出す』
今、ブームになっている不動産ファンドですが、中には資金の90%を短期資金の借り入れで運用を行っているところもあると言われており、日銀が聞き取り調査に入っていると伝えられてもいます。
先日発表になりました『1兆円ファンド』は、以下の資金構成になっています。
2,500億円 : 年金等運用資金
7,500億円 : 金融機関からの融資
年金資金が今の不動産バブルに乗り出してきたのです。そして、金融機関が75%もの融資をする。まさに、バブル期そのものの動きとなっています。
そして、いまや不動産利回りが5%を切り3%にまで落ち込んできているファンドが多く出てきています。
このため、利回りでは顧客を納得させることが出来ず、『総合利回り』という言葉を使って利回りを“かさ上げ”して勧誘をしているファンドが出てきているのです。
この『総合利回り』という意味は、家賃収益に、転売した際の想定収益を加算して計算しており、更にはこの<家賃収益>を実際の収入ではなく、満室になっていると仮定した<想定利回り>という言葉に置き換えているところもあります。
ファンド達は、ありとあらゆる言葉を弄して、資金を集め投機を行っているものですが、金利上昇に入りつつある今、この不動産バブルが一気に崩壊することもあり得る状況になっているのです。
その際、年金資金、金融機関の資金は一体どうなるでしょうか?
その昔、北米で見られました、空きビル・空きマンションだらけで競売ばかり・・という光景が日本で見られるかもしれません・・・。
そして破産したファンドに資金を出した年金運用者や運用資産を失った年金基金は一体どうなるでしょうか・・・。
バブルが崩壊しました、損をしました、では済まないことになることを肝に銘じておく必要があると言えます。
次の項へ→
|